「資格を取ったのに、現場では特に何も言われなかった」。そんな肩透かしを味わったエンジニアは、私だけではないはずです。SESエンジニアとして5年ほど、これまで4社ほどの客先常駐を経験してきましたが、基本情報技術者を独学で取得した時に、まさにこの感覚を味わいました。今回は、取得の動機から、現場で実際にどう扱われたかまでを、当時の実感のまま書きます。

この記事で分かること

  • 基本情報技術者を独学で取ろうと思った本当の動機
  • スキルシートに資格を書いた後、現場で実際に何が起きたか(起きなかったか)
  • 単価交渉や評価面談で資格がどう扱われたか
  • 資格取得で得られたものと、期待していたことのズレ
  • 次に検討しているクラウド系資格への向き合い方
目次
  1. 基本情報技術者を独学で目指した理由
  2. 独学で数か月、コツコツ勉強を続けた話
  3. スキルシートに書いても、現場からは何も聞かれませんでした
  4. 単価交渉や評価面談でも話題にならなかった
  5. 「お守り程度だった」というのが正直な実感
  6. なぜ資格だけでは単価も評価も動かないのか
  7. 資格が「効くケース」と「効きにくいケース」の違い
  8. 基礎知識が身についたことだけは事実です
  9. 次に興味があるのはクラウド系資格ですが、まだ着手していません
  10. 同じ経験をしている人に伝えたいこと
  11. まとめ

基本情報技術者を独学で目指した理由

基本情報技術者を取ろうと思ったのは、2〜3社目のSES時代のことです。当時の現場でも、指示されたとおりにコードを書くこと自体はできていました。ただ、なぜそう書くのか、その背景にある基礎知識まで理解できているかというと、正直かなり怪しい状態だったと思います。

たとえば、なぜこの処理はこの書き方が定石とされているのか、なぜこのデータ構造を選ぶと後の変更が楽になるのか。そういった「なぜ」の部分を、その場しのぎで流してしまっている自覚がありました。目の前のタスクをこなすことはできても、それを裏側の理屈から説明しろと言われると答えられない。そういう感覚が積み重なるうちに、一度基礎を体系的に固めておきたいと思うようになりました。

普段の現場ではJavaやJavaScript・TypeScriptを使った業務システムの開発に携わることが多いのですが、目の前の言語やフレームワークの使い方を覚えるだけでは、その裏にあるコンピュータサイエンスの基礎知識までは埋まりません。

基本情報技術者はIPA(情報処理推進機構)が実施している国家試験で、アルゴリズムとデータ構造、ネットワークやデータベースの基礎、セキュリティ、さらにはマネジメントや経営戦略まで、ITの基礎知識を幅広く体系的に問う試験になっています(出典: IPA公式サイト)。この範囲の広さが、自分がそれまで手を動かしながらも曖昧にしてきた部分を、ちょうど埋め合わせてくれそうに感じました。

資格取得の動機は、大きく2つに分かれると思います

  • 単価アップ・評価アップなど、待遇への反映を主目的にする場合
  • 基礎知識の穴を埋めたい、体系的に学び直したいという場合

正直に言うと、単価や評価を上げたいという気持ちが最初になかったわけではありません。ただ、一番の動機はそこではなく、あくまで自分の理解の穴を埋めたいという気持ちのほうが強かったです。この温度感の違いは、後で振り返った時に自分の受け止め方を大きく左右することになりました。動機を待遇の反映に置いていたら、この後に書く「反応の薄さ」は、もっと強い失望として残っていたと思います。

独学で数か月、コツコツ勉強を続けた話

勉強のスタイルは独学一本でした。会社の資格取得支援やスクールは使わず、参考書を中心に、仕事の合間を縫って数か月かけてコツコツ取り組みました。試験当日にどんなドラマがあったかと聞かれても、正直そこまで印象に残るエピソードはありません。

淡々と勉強して、淡々と受けて、結果として合格した。それが実際のところです。派手な逆転劇があったわけでも、追い込みの一夜漬けがあったわけでもなく、地味な積み重ねをそのまま続けただけでした。

客先常駐という働き方は、勤務先が用意する教育制度よりも、本人の自己啓発に委ねられている場面が多いというのが、これまで複数の現場を渡り歩いてきた自分の実感です。現場によって使う言語や工程は変わっても、基礎知識を体系的に学ぶ機会を会社側が用意してくれる場面には、あまり出会いませんでした。独学が特別な選択だったというより、SESという働き方の中ではむしろ自然な選択肢だったように思います。

開いた本の上に、独学の積み重ねを表す小さな丸が並び、その先に取得した資格のバッジが浮かんでいるイラスト

この地味な期間そのものを、今振り返って無駄だったとは思いません。ただ、当時の自分がその先に期待していたことと、実際に資格を取った後に現場で起きたことの間には、それなりのギャップがありました。

スキルシートに書いても、現場からは何も聞かれませんでした

資格を取った後、私がしたことは特別なことではありません。常駐先に提出するスキルシートの資格欄に「基本情報技術者」と記載しただけです。合格通知を受け取って、資格欄を更新して、次のスキルシート提出のタイミングでそのまま出す。それだけでした。

SESで働いていると、スキルシートは案件の切り替わりのたびに提出し直す書類です。保有資格・経験した言語・担当した工程などが一覧になっていて、客先はこれをもとに、その人が案件の要件に合うかどうかを判断します。自社の営業がこのスキルシートを客先に提示し、そこから面談を経て次の案件が決まる、というのがおおよその流れです。理屈の上では、資格欄が一つ増えれば、その分だけ客先や自社からの見え方が変わってもおかしくないはずです。

ところが実際には、これに対して営業や上司から特にコメントや反応があったことはありません。話題に上ることすらありませんでした。取得を大々的に報告するような場を自分から設けたわけではありませんが、それにしても反応の薄さは想像していた以上でした。

スキルシートの資格欄に「基本情報技術者」の項目が追加されている一方、隣に置かれた吹き出しの中身が空っぽになっているイラスト

単価交渉や評価面談でも話題にならなかった

単価交渉の場や評価面談でも、この資格が明確な材料として扱われたという実感はありません。資格欄の記載が一つ増えたこと自体は事実として残りますが、それが具体的な単価アップや評価アップに直結したという手応えは、今に至るまでありません。

案件が変わって新しいスキルシートを作る時にも、資格欄には引き続き「基本情報技術者」と書いています。ただ、それを提出した後の反応は、最初にスキルシートを出した時と変わりません。特に何も聞かれない、という状態がそのまま続いています。

「お守り程度だった」というのが正直な実感

この一連の経験を一言でまとめると、資格は「お守り程度」だったというのが自分の実感です。取得したこと自体を後悔しているわけではありません。ただ、当時どこかで期待していた「資格を取れば現場での見られ方が変わるかもしれない」という淡い期待は、はっきり外れました。

美化してもしょうがないので正直に書きますが、資格を持っていることで肩身が狭くなることはない、という程度の安心材料にはなっています。ただ、それ以上の効果を実感したことは、これまでのところ一度もありません。

なぜ資格だけでは単価も評価も動かないのか

現場に出てから振り返ると、この結果自体はそれほど意外なものではなかったのかもしれません。単価を決めるのは、常駐しているエンジニア本人ではなく、自社と客先との間の契約です。単価交渉はそもそも会社同士の話であって、現場の個人が資格を一つ増やしたタイミングと連動して自動的に動く性質のものではありません。

ポイント: 資格は「単価交渉の起点」にはなり得ても、それだけで交渉が自動的に始まるわけではありません。声を上げるかどうか、上げたとして通るかどうかは、資格の有無とは別の要因(契約更新のタイミング、客先の予算状況、自社の営業方針など)に大きく左右されます。資格を取っただけで何も変わらなかったとしても、それは資格そのものの価値がなかったという意味ではなく、単価・評価が動く仕組みが元々そこにないというだけの話です。

自分の場合、資格を取った後にこちらから単価交渉を持ちかけたわけでもありません。資格欄を更新して提出しただけで、その先の行動を起こさなかった以上、営業や上司の側から見ても「特に交渉材料として使う理由がなかった」というのが実態に近いのだと思います。資格を取ったこと自体が、自動的に交渉のきっかけになるわけではないという当たり前のことを、身をもって知った形です。

資格が「効くケース」と「効きにくいケース」の違い

これは自分なりの見立てですが、資格が現場で意味を持つかどうかは、資格そのものの難易度よりも、目の前の案件の要件とどれだけ直接結びついているかで決まるように思います。客先が「この案件にはAWSの認定資格を持つ人が欲しい」と明確に求めているような場面では、その資格を持っているかどうかがそのまま要件適合の判断材料になります。

一方、基本情報技術者のような幅広い基礎知識を問う資格は、特定の案件の要件と直接結びつく場面が少ないというのが実感です。基礎ができている証明にはなっても、「この案件にすぐ使えるスキル」を具体的に示すものではないため、客先や営業からすると、単価や評価を動かす直接の理由にはなりにくいのだと思います。取った資格の種類によって、現場での扱われ方に差が出るという可能性は、この経験を通じて初めて実感を持って理解できました。

同じ資格でも、それを取った時期の案件の要件次第で扱われ方が変わるだろう、とも思います。たまたま基礎知識の底上げを求めている案件に当たっていれば、また違う反応があったかもしれません。今回に関して言えば、そういうタイミングの噛み合わせがなかった、というだけのことなのかもしれません。

基礎知識が身についたことだけは事実です

ここまで淡々とした話が続きましたが、資格取得そのものを否定したいわけではありません。基礎知識が身についたという実感自体は、正直にあります。コードの意味が分からないまま手を動かしていた頃と比べると、アルゴリズムの考え方やネットワーク・データベースの基礎、セキュリティの基本的な考え方について、以前より説明できるようになった感覚はあります。

ただ、その学びの価値と、現場での評価・単価への反映は、まったく別の話だったというのが今の結論です。基礎を固めたいという動機で資格を取るなら、その目的自体は十分に果たされます。一方で、単価や評価への反映を主目的に据えるなら、期待は控えめにしておいたほうがよさそうだ、というのが自分の実感です。

次に興味があるのはクラウド系資格ですが、まだ着手していません

基本情報技術者を取った経験を踏まえて、次に興味があるのはクラウド系の資格です。AWSなど、実務でも触れる機会が増えているクラウド分野の資格を、いずれ取ってみたいと考えています。基本情報技術者で感じた「案件の要件と直接結びつきにくい」という物足りなさを、もう少し実務に近い資格で埋め合わせたい、というのが今の関心の背景にあります。

先に書いた「資格が効くケース」の見立てに沿えば、クラウド系の資格は基本情報技術者よりも、案件の要件と直接結びつきやすい種類の資格だと考えています。JavaやJavaScriptを使った業務システムの開発でも、インフラ部分にクラウドサービスを使う場面は年々増えている印象があり、そこに直接関わる資格であれば、基本情報技術者の時とは違う反応が返ってくるかもしれない、という期待は持っています。

ただし、正直に言うとまだ具体的に着手はしていません。基本情報技術者の時のように「よし、今度こそ」という段階には至っておらず、興味があるという段階にとどまっています。着手したという既成事実を作りたくて書いているわけではなく、今の自分の位置をそのまま記録しておきたいというだけです。

同じ経験をしている人に伝えたいこと

資格を取ったのに現場から反応がない、という状況に置かれた時、自分を責める必要はないと思います。資格を取ったこと自体が問題だったのではなく、単価・評価が動く仕組みと資格取得のタイミングが、そもそも噛み合っていないだけのことが多いからです。

資格取得を検討する時に、確認しておきたい3つの視点

  • 自分の動機は「待遇への反映」か「基礎固め」か、最初に切り分けておく
  • その資格が、今の現場・目指す現場の要件と直接結びつくものかどうかを見ておく
  • 資格を取った後、自分から単価交渉や案件アサインの話を持ちかけるところまで含めて考える

私自身は、資格欄を更新して提出しただけで、その先の行動を起こしませんでした。今振り返ると、資格を交渉材料に変えるところまでやって初めて、資格取得の効果を測れるのだと思います。取っただけで満足してしまった自分にも、反応が薄かった一因はあったのかもしれません。

まとめ

独学で基本情報技術者を取得した後、私が現場で経験したのは「特に何も聞かれない」という淡々とした現実でした。スキルシートの資格欄に記載を増やしても、単価交渉や評価面談の材料として明確に効いた実感はありません。資格は「お守り程度」だった、というのが正直な結論です。

それでも、基礎知識が身についたという学び自体の価値までは否定していません。コードの意味を理解しないまま手を動かしていた頃と比べれば、確実に前進した実感があります。もし今、資格取得を検討している方がいるなら、まず自分の動機が「待遇への反映」なのか「基礎固め」なのかを切り分けておくことをおすすめします。前者を主目的にするなら、資格単体で単価や評価が動く可能性は低いと見積もっておいたほうが現実的です。後者であれば、現場からの反応がどうであれ、学び自体の価値は残ります。

単価や評価が動く仕組みは、資格の有無そのものよりも、契約更新のタイミングや会社同士の交渉、そして資格を取った後に自分がどう動くかによるところが大きいというのが、今の自分の見方です。この記事が、同じように資格を取ったのに現場からの反応が薄くて拍子抜けした誰かにとって、「自分だけではなかった」と思える材料になれば十分です。