「未経験でもSESなら大丈夫」と入社説明会で言われて2021年4月に入社したものの、実際に現場に出るまでの間に何が起きるのか、当時の自分はまったく想像できていませんでした。
SESエンジニアとして5年ほど、客先常駐で複数の現場を渡り歩いてきましたが、振り返ってみると一番情報が少なかったのに、一番不安だったのがこの1年目の入り口です。
今回は、入社から研修、配属、最初の客先常駐までの流れを、「きつかったのか」「後悔したのか」という疑問への答えも含めて振り返ります。新卒入社でも、未経験で中途入社でも、入社から現場までの順番は変わりません。差が出るのは研修の厚みと配属の決まり方なので、入社前に確かめる項目も最後にまとめました。
この記事で分かること
- 入社から約5週間の研修で、実際に何をやっていたか
- 研修のあと配属はどう決まり、待機はあったのか(私は待機なし)
- 初めての客先常駐で戸惑ったこと、質問できずに詰まった失敗
- 1年目はきついのか、後悔したのか、私の答え
- 入社前に確認したいこと、情報通信業の離職率の統計
目次
SES未経験の1年目、研修から配属・初現場までの流れ
「SES 未経験 きつい」「SES 研修なし 放置」といった検索結果を見ると、未経験入社はいきなり現場に放り込まれてつぶれるものだ、という書かれ方をよく見かけます。実際には会社によって研修の手厚さはまったく違い、私が入った会社はどちらかというと手厚い部類でした。
この記事で書くのは、2021年4月に入社してから1年目が終わるまでの、いわば「配属される側」から見た時間軸です。研修の中身そのものの他社比較や、5年経った同期のその後については別の記事に譲り、ここでは1年目の入り口に絞ります。
私の場合、入社から現場に出るまでは次の順番で進みました。研修が終わった時点でそのまま配属になり、待機の期間は一度もありませんでした。
私の1年目の入り口にあたる数字です。どれも私の会社の場合のものです。
- 入社2021年4月
- 集合研修2週間
- 自習期間3週間
- 配属待機なし
- 初めての現場最初はテストから
「新卒でも同じか」と聞かれれば、流れ自体は同じです。4月入社の同期と一緒に研修を受け、そこから各自が別々の現場に散っていく、という形でした。研修がそもそもない会社や、研修が数日で終わる会社では、この流れの前半がごっそり短くなります。
同期と過ごした5週間、研修の中身
入社後の5週間は、前半2週間の集合研修と、後半3週間の自習期間に分かれていました。それぞれの期間で何をしていたかを書きます。
前半2週間、集合研修でのつまずき
入社してすぐの2週間は、同期と集まっての集合研修でした。内容はJavaの基礎文法、SQLの書き方、Gitの使い方、簡単な設計の考え方といった、いわゆる基礎科目です。講師は自社の社員が務め、演習をこなしながら進むスタイルでした。
正直に言うと、最初の数日はほとんど付いていけませんでした。未経験で入った身には、聞き慣れない用語と書き方が一度に押し寄せてくる感覚で、とくに複数テーブルの結合は頭の中で整理するのに時間がかかりました。
同期の中には情報系の出身で早く課題を終える人もいて、自分との差を感じる場面はありました。ただ、講師にその場で聞ける環境だったので、遅れてもその日のうちに取り戻せたのは救いでした。
後半3週間、自習期間とタスク管理アプリの課題
集合研修が終わると、3週間ほどの自習期間に入りました。課題は、簡単なタスク管理アプリを一人で作ることです。タスクの登録・完了・一覧表示ができれば形になる、という程度の要件でしたが、一人で最初から設計して組み立てる経験自体が初めてで、想像していた以上に時間がかかりました。
自習期間の最後には、講師役の方にレビューを受けました。動くものを作ることに必死で、変更に強い作りにするという発想がまるで抜け落ちていたことを、そこで思い知らされました。
自習期間で身についたこと
一人で最初から組み立てる経験をしたことで、「動けば終わり」ではなく、後から直しやすいかどうかまで考える視点を初めて持ちました。
この視点は、配属後にテストや既存の設計書を読む仕事で、思っていた以上に役立ちました。
合計するとおよそ5週間、研修と呼べる期間がありました。当時はこれが当たり前だと思っていましたが、この手厚さが崩れるのは2社目に移ってから、という話は別の記事で詳しく書いています。
研修のあと配属はどう決まったか
自習期間が終わると、私の場合はそのまま配属先が決まりました。配属先は、自社が客先の案件と本人の状況を突き合わせて決めるもので、本人が案件を選ぶ形ではありません。
私が配属されたのは、Javaを使う業務システム開発の現場でした。研修で触れた言語がそのまま仕事になったので、習ったことがまったく通用しない、という事態は避けられました。
この配属の決まり方は、会社の中だけで完結する話です。客先が同席して実質的な選考になる後々の「面談」とは性質がまったく違い、その構造は別の記事にまとめています。
ポイント: 配属先は、研修の内容や希望よりも、そのとき客先に空いている案件との兼ね合いで決まります。
希望を伝える場があるかどうか、どこまで考慮されるかは会社しだいなので、入社前に聞いておく価値があります。
このとき決まった「Javaを使う業務システム開発」という方向性は、その後4社を渡り歩く今まで、ずっと変わっていません。最初の配属が、その後の技術の土台になることを、あとから実感しました。
あわせて、1年目の入り口でお金の面も押さえておきます。入社時の基本給は22.6万円で、客先に出す単価は月55万円だと、現場のリーダーや営業から聞いていました。研修中は残業がなく、配属後に残業が出た分は実費で支給されています。「SES 新卒 年収」で調べる人が気になるのは、この基本給と残業代の扱いだと思うので、数字をそのまま載せておきます。
配属前の待機は私にはなかった、有無は会社しだい
結論私は待機が一度もありませんでしたが、待機の有無と待機中の給与は会社ごとに違うので、入社前に確認しておくのが安全です。
「SESは研修が終わっても配属先が決まらず、待機になる」という話を、入社前にどこかで目にした人も多いと思います。私の場合は、集合研修と自習期間が終わった時点で配属先が決まっていて、研修から現場までの間に待機の期間はありませんでした。1社目だけでなく、その後の現場でも待機になったことは一度もありません。
ただ、これは私の会社の運用がたまたまそうだったというだけで、SES全体の保証ではありません。待機が起きるのは、本人の状況と客先の案件の開始時期が噛み合わないときです。本人の実力というより、案件側の都合で起きる性質のものです。
待機になった場合の給与の扱いも、会社によって対応が分かれます。社内待機なのか自宅待機なのか、給与は満額なのか、減るのかといった点です。休業手当の考え方や、給料なしは違法かという論点は、待機中の給与の扱いの記事で条文ベースで整理しています。
待機について入社前に聞いておくこと
- 研修が終わってから配属までの間に、待機の期間が生じることはあるか
- 待機になった場合、その間の給与は満額か、減額されるか
- 待機中は出社なのか自宅なのか、何をして過ごすことになるか
待機の不安は、入社前に聞いてしまえばかなり小さくできます。聞いたときの答えが曖昧だったり、はぐらかされたりする会社は、入社後に待機が起きたときの説明も曖昧になる可能性が高いと私は見ています。
初めての客先常駐で戸惑ったこと
配属が決まり、最初の客先常駐が始まりました。チームは5〜10名ほどで、私はその中で一番新しいメンバーでした。この現場は、リモートの日はなく毎日出社でした。研修直後で、リモートの対象外だったためです。
最初に感じたのは、研修と現場のギャップです。研修はコードを書く練習が中心でしたが、現場で渡されたのは設計書とテストの仕事でした。
私の1社目の現場の規模と期間です。
最初はテスト業務が中心
最初に任されたのは、開発ではなくテストでした。既存の設計書とテスト仕様書を読み、手順どおりに画面を操作して結果を記録し、おかしければ不具合として報告する、という仕事です。研修で作ったタスク管理アプリのような「ゼロから作る」経験とはまったく違い、正直、物足りなさと不安が入り混じった感覚がありました。
それでも、設計書を読んで、仕様どおりに動くかを確かめる作業は、現場の進め方を知るうえで悪くない入り口でした。後から振り返ると、2社目で設計から担当することになったとき、この「設計書を読む目」が役に立っています。研修だけでは身につかない部分を、先にテストで経験できたのは運が良かったと思います。
つまずいた瞬間、質問できなかった時間
一番の失敗は、あるバグ報告の再現ができず、数時間も一人で抱え込んでしまったことです。研修中は分からないことがあれば講師にすぐ聞ける環境でしたが、現場では誰に聞けばいいのかも分からず、周りは皆忙しそうに見えて、なかなか声をかけられませんでした。
結局、見かねた先輩社員が声をかけてくれて、状況を説明したところ、あっさり原因が分かりました。設定ファイルの参照パスが、自分の手元の環境とテスト環境で違っていただけの単純な話です。一人で悩んだ時間が長かっただけに、拍子抜けしました。
研修中は自分から聞かなくても向こうから声がかかる環境に慣れていたので、現場では自分から声を上げないと誰も気づいてくれない、という当たり前のことに、身をもって気づかされました。
この一件のあと、分からないことをメモに書きためておき、休憩のタイミングでまとめて聞く、という自分なりのやり方を作りました。1件ずつ聞きに行くのは気が引けても、3件まとめてなら聞きやすい、という感覚があったからです。
現場で詰まったときの私のルール
- 分からなくなったら、30分を目安に見切りをつけて自分から声を上げる
- 聞きたいことはメモにためて、休憩のタイミングでまとめて聞く
この失敗だけを切り取ると散々な現場に見えるかもしれませんが、実際にはそうでもありませんでした。声をかけてくれる先輩がいて、質問できる相手が現場にいたことは、1年目の入り口では大きな救いでした。制度として決まっていたわけではなく、あくまで人に恵まれた面が大きいと思っています。
残業は、研修中はありませんでした。配属後は月10〜20時間ほどで、その分の残業代は実費で支給されました。極端に忙しい現場ではなく、淡々とテストをこなす日々でした。
その分、1年目の入り口で体力的に消耗することはありませんでした。きつさの種類は、忙しさというより「分からないことを抱え込む孤独」のほうにありました。
1年目はきついのか、後悔したのか、私の答え
結論1年目の入り口は、体力的にはきつくありませんでした。後悔があるとすれば、現場で質問を抱え込んだ時間です。きつさや後悔の本番は、2社目以降に来ました。
「SES 未経験 きつい」「SES 新卒 後悔」と検索する人が知りたいのは、結局、自分が耐えられるかどうかだと思います。私の1年目を、きつさの種類ごとに分けて振り返ります。
きつかったのは、次の3つでした。
- 研修序盤の理解 最初の数日は付いていけず、毎日必死でした。ただし講師に聞ける環境だったので、遅れは取り戻せました
- 研修と現場のギャップ コードを書く練習から、設計書とテストの仕事に変わり、物足りなさと不安がありました
- 質問を抱え込む孤独 現場では自分から声を上げないと誰も気づいてくれず、数時間を無駄にしました
逆に、残業や拘束時間という意味でのきつさは、1年目の入り口にはありませんでした。月10〜20時間の残業で、研修中はゼロです。
後悔については、入り口そのものを後悔したことはありません。ただ、振り返って「あのとき聞いておけばよかった」と思うのは、現場での質問のタイミングです。入社前の確認項目という意味では、研修の有無や期間、配属の決まり方、待機の扱いは、聞いておくと安心だった項目だと今は思います。
注意してほしいのは、この「きつくなかった」は、私が研修の手厚い会社に入り、残業の少ない現場に配属されたという運の要素が大きいことです。2社目では研修がなくなり、残業が月40〜60時間に増えました。1年目の入り口が穏やかだったからといって、その先もずっと穏やかとは限らない、というのが私の実感です。
入社前に確認したい、研修・配属・待機・商流のチェックリスト
1年目の入り口がどうなるかは、入社前にある程度確かめられます。ここまで書いた私の経験をもとに、聞いておきたい項目を表にまとめました。
| 確認すること | 聞き方の例 | 答えで見るポイント |
|---|---|---|
| 研修の有無・期間 | 「入社後の研修は何日で、誰が教えますか」 | 日数だけでなく、教える人が決まっているか、配属後に質問できる相手がいるか |
| 配属の決め方 | 「配属先は誰が、いつ、何を基準に決めますか。希望は伝えられますか」 | 希望を伝える場があるか。決定権は会社と客先にあるので、通る前提にはしない |
| 待機の有無・待機中の給与 | 「研修後に配属が決まらない期間はありますか。その間の給与は」 | 待機の期間の目安と、給与が満額か減額か。曖昧な答えは要注意 |
| 商流(何次請けか) | 「主な取引先は元請けですか、何次請けが多いですか」 | 何次請けかで、現場での裁量や単価の取り分が変わる。具体的に答えてもらえるか |
| 配属後の質問先 | 「配属後の最初の1か月、誰が何を教えてくれますか」 | 「現場の先輩に聞いてください」だけで終わらないか |
聞くタイミングは、内定後から入社承諾までの間、あるいは面談の逆質問が現実的です。答えが具体的な会社ほど、入社後の運用も具体的である可能性が高いと私は見ています。
研修については研修制度が当てにできるかの見分け方で、4社の実例と統計を使ってさらに詳しく書いています。
1年目が終わる頃、同期はどうなっていたか
2022年3月、1年目が終わる頃には、私が把握している範囲で同期はみんなまだ同じ会社に在籍していました。この時点では誰も辞めていません。同期でも配属先はバラバラで、1年目の体験は配属先でかなり変わることは、このころ実感しました。
同期がその後どう動いたかについては、同期のその後をまとめた記事で詳しく書いています。1年目の時点では誰も動いていない、という点だけここで確認しておきます。動き出すのはもう少し先、2年目以降の話です。
情報通信業の離職率、統計で確認できること
厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」で、情報通信業の新規大卒就職者について、就職後3年以内の離職率は令和3年3月卒で29.3%、令和4年3月卒で27.2%です。全産業計は令和3年3月卒が34.9%、令和4年3月卒が33.8%なので、大卒では情報通信業のほうが全産業より6ポイント前後低い水準です(出典: 厚生労働省「新規大卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」別紙3)。
高卒についても同じ調査の別紙2で確認すると、情報通信業の3年以内離職率は令和3年3月卒で38.7%、令和4年3月卒で36.1%です。全産業計は令和3年3月卒が38.4%、令和4年3月卒が37.9%で、高卒では全産業との差は小さいといえます(出典: 厚生労働省「新規高卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」別紙2)。
| 就職後3年以内の離職率 | 情報通信業(令和3年3月卒) | 情報通信業(令和4年3月卒) | 全産業計(令和3年3月卒) | 全産業計(令和4年3月卒) |
|---|---|---|---|---|
| 新規大卒就職者 | 29.3% | 27.2% | 34.9% | 33.8% |
| 新規高卒就職者 | 38.7% | 36.1% | 38.4% | 37.9% |
私が入社した2021年4月は、令和3年3月卒の世代にあたります。どちらの世代でも、数字の上では「SESを含む情報通信業だから離職率が突出して高い」とは言えません。ただし、この区分は情報通信業全体で、SESだけを切り出した数字ではない点には注意が必要です。
この統計でわかること・わからないこと
この統計には「1年目だけ」「情報通信業だけ」を掛け合わせた数字が存在しません。判明しているのは、全産業計での1年目の離職率が大卒12.1%、高卒17.9%(いずれも令和4年3月卒)という数字だけで、情報通信業に絞った1年目単独の離職率は、少なくとも私が確認できた資料には載っていませんでした。
「SES 1年目 離職率」といった具体的な数字を見かけても、この解像度の統計は存在しないはずなので、鵜呑みにしないほうがよいと思います。
この統計は、私が研修制度についての記事で使った「能力開発基本調査」とは別の調査です。あちらは企業側の教育投資の実態を測るもの、こちらは実際に離職した人の割合を測るものです。
自分の観測範囲に戻ると、同期で1年目に辞めた人は私の把握する範囲でゼロで、統計上の「1年目の離職率」を実感として裏付ける材料にはなりませんでした。むしろ動き出したのは2年目以降です。なぜ辞めなかったのか、私なりの見立ては2つあります。ただし統計が示していることではなく、あくまで自分の解釈です。
1年目に誰も辞めなかった、2つの見立て
- 研修のクッションがあった現場に出て間もない時期の負荷が、その分多少和らいでいたのかもしれません
- 検討する余裕がなかった1年目は覚えることが多すぎて、辞めるかどうかを考える余力自体がなかった可能性があります
この2つは、外から見ているだけでは見分けがつきません。
まとめ
未経験でSESに入ってからの1年目は、集合研修、自習期間、配属、そして初めての客先常駐という順番で進んでいきました。私の場合は、研修から配属までに待機はなく、約5週間の研修を経てそのまま現場に出ています。
5週間の研修があったこと自体は、業界の中でも恵まれた部類だったと今は思います。それでも、初めての現場では「もっと早く聞けばよかった」と後悔する場面がありました。
これから未経験でSESに入る人に伝えられることがあるとすれば、次の3つです。
- 研修・配属・待機の扱いは会社ごとに違うので、入社前に聞いておく 私は待機がありませんでしたが、これは会社の運用しだいです。チェックリストの表を使ってください
- 1年目の入り口は体力面ではきつくなかったが、運の要素が大きい 2社目では研修がなくなり、残業も月40〜60時間に増えました
- 現場で分からないことがあれば、30分を目安に自分から声を上げる 数時間抱え込んで学んだ教訓です。メモにためて休憩時にまとめて聞くのも一つの方法です
私自身、現場で声を上げられるようになったのは1年目の終わりに近づいてからでした。統計を見る限り、情報通信業の離職率は大卒で全産業より低く、高卒でも大差はないのに「未経験 SES きつい」という検索が絶えないのは、1年目に何が起きるのかが外からは見えにくいからだと思います。
これから未経験でIT業界に入ろうとしていて、SES以外の入り口とも比べたいなら、未経験向けのIT転職エージェント(@PRO人
など)で、チェックリストの項目を応募前に聞いておく方法もあります。研修の中身を他社と比べたい方は、次の記事も参考にしてください。
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