週次の進捗会議が終わった直後、「このあとは部内の話があるので、今日はここまでで」と言われ、画面の向こうの接続先ごと切り替わったことがあります。
SESエンジニアとして5年ほど、4社の客先常駐を経験してきましたが、この「呼ばれない側」に立つ感覚は、複数名で常駐している今の現場に来てから一番はっきり感じるようになりました。
今回は、客先常駐でプロパーとの壁をどこで具体的に感じるのか、その線引きがなぜ生まれるのかを、今の現場(4社目)の実体験から整理し、壁を前提にした立ち回り方までお伝えします。
なお、この記事でいう「プロパー」は客先の正社員のことです。自分が所属するSES企業の自社正社員という意味ではありません。「BP」は、元請けから見た協力会社(ビジネスパートナー)の略で、私たちSES側の立場を指します。
この記事で分かること
- プロパーだけの定例に切り替わり、決定事項だけが後から降りてくる具体的な場面
- 「〇〇さん」と「〇〇社さん」という呼び方の違いに気づいた経緯
- 社内Wikiで、見える情報と見えない情報が分かれていた実例
- 壁の背景にある準委任契約の建前・秘密保持の誓約と、疑義応答集で確認した会議同席の扱い
- 「呼ばれない=違法」ではない理由と、制度上の窓口が誰かを確かめる視点
- 壁を前提にした情報の取り方と、信頼関係の作り方
目次
- 客先常駐でプロパーの会議に呼ばれないと気づいた場面
- 決定事項は、チケットの更新という形で降りてきました
- 呼び方にも線引きがありました|「〇〇さん」と「〇〇社さん」
- 一貫して会社名で呼ばれていたわけではありません
- 社内Wikiにも、見える情報と見えない情報がありました
- 開発情報はオープン、人事・総務系はクローズ
- 現場によって、壁の厚さは違いました
- なぜ壁ができるのか|契約の建前と秘密保持の視点
- 準委任契約の建前が「会社対会社」の関係を作る
- 秘密保持の誓約書が、情報の線引きを後押しする
- 呼ばれないのも、呼ばれるのも、それだけでは違法ではありません
- 第2集の問9・問10|同席やccは、それだけでは直ちに派遣にならない
- 第3集とガイド|アジャイルやチャットの場面でも、軸は同じです
- 私の現場に当てはめると
- 制度上の窓口は、受注側の管理責任者と自社の営業です
- 壁を前提にした情報の取り方・信頼関係の作り方
- まとめ
客先常駐でプロパーの会議に呼ばれないと気づいた場面
今の現場(4社目)は、客先の社内向け業務システムを、独自の社内フレームワークで改修する二次請けの案件です。参画から9か月ほど経ちました。週次で開発の進捗定例があり、いつもは自社から私を含む数名、客先のプロパーが2〜3名、元請けの担当者が1名という顔ぶれで進みます。
参画から5か月ほど経ったある週、その定例がいつもより早く終わりました。プロパーのリーダーが「このあとは部内の話があるので、今日はここまでにしましょう」と言って会を締めたのです。Teamsの画面はそのまま接続が切り替わり、私たちには新しい接続先の案内は来ませんでした。
何を話す会なのか、聞かれもしませんでしたし、こちらから尋ねる空気でもありませんでした。この切り替わりは、その一回きりでは終わりませんでした。参画9か月の間に、月1回あるかないかの頻度で同じことが起きています。最初は偶然かと思っていましたが、今では定例の一部として織り込んで受け止めるようになりました。
決定事項は、チケットの更新という形で降りてきました
翌週、チケット管理システムを開くと、次期フェーズで予定していた改修対象画面の優先順位が変わっていました。先行する予定だった画面が後回しになり、別の画面が先に上がっていたのです。
理由が気になり、チケットのコメント欄で経緯を聞いてみました。
優先順位が変わった経緯を教えていただけますか
部内で整理した結果です。
返ってきたのは、この一文だけでした。悪気があっての回答だとは思っていません。ただ、経緯を追いかける手段が、こちらには最初から用意されていないのだと実感しました。呼ばれなかったこと自体より、決定の経緯をたどる手段がなかったことのほうが引っかかった、というのが正直な感覚です。
作業内容そのものへの不満はありませんでした。優先順位が入れ替わっても、担当する仕事の量が減るわけでも増えるわけでもなかったからです。それでも、自分たちが関わっている改修の方向性が、自分たちの知らないところで決まっているという事実は、じわじわと効いてきます。
会議の種類によって、情報の届き方がどれだけ違うかを並べてみると、次のようになります。
| 会議の種類 | 出席者 | 情報の伝わり方 |
|---|---|---|
| 開発の進捗定例 | 自社数名・プロパー2〜3名・元請け1名 | その場で直接聞ける |
| 部内定例(呼ばれない会) | プロパーのみ | チケットの更新結果として、数日遅れで伝わる |
| 結合テストの日程調整 | 会社をまたいだ混成メンバー | その場にいれば聞けるが、呼び方に線引きがある |
同じ「情報が降りてくる」でも、直接聞ける場とチケット経由でしか分からない場とでは、解像度がまるで違います。
呼び方にも線引きがありました|「〇〇さん」と「〇〇社さん」
もう一つ、参画から4か月目ごろに気づいたことがあります。結合テストの日程を調整するために臨時で開かれたミーティングでの出来事です。参加者はプロパー3名、元請けの担当者1名、自社から私と同僚の2名、別の協力会社から1名の、合わせて7名でした。
進行していたプロパーのリーダーは、プロパー同士は下の名前やニックネームで呼び合い、元請けの担当者には「〇〇さん」と個人名で呼びかけていました。ところが私たちと別の協力会社のメンバーには、「〇〇社さん、この日程で大丈夫ですか」というように、会社名に「さん」をつけた呼び方をしていたのです。
一貫して会社名で呼ばれていたわけではありません
その場ではあまり気に留めませんでした。ただ、その後に出席した別のミーティングでも、同じ呼び分けが繰り返されているのに気づき、記憶に残るようになりました。参画初日の自己紹介では「シンペイさんですね、よろしくお願いします」と個人名で呼ばれていたので、最初から一貫して会社名で呼ばれていたわけではありません。
普段の1対1のやり取りでは名前で呼ばれ、複数の会社が同席する場になると会社名に切り替わる。この違いに気づいてから、意識して観察するようになりました。これが意図的な区別なのか、単なる習慣なのかは、正直なところ分かりません。名前で呼ぶ相手・立場と、会社名で呼ぶ相手・立場が、無意識のうちに分かれているだけかもしれません。
それでも、複数社が同席する場になった瞬間、自分が「個人」ではなく「会社の代理」として扱われている感覚を持ったのは事実です。
チャットのメンションでも、同じ傾向があります。会議の場に限った話ではなく、書き言葉のやり取り全体に及んでいる区別なのだと、後から気づきました。
| 場面 | 呼ばれ方 |
|---|---|
| 参画初日の自己紹介・1対1のやり取り・個別のダイレクトメッセージ | 「シンペイさん」(個人名) |
| 複数の会社が同席する会議 | 「〇〇社さん」(会社名) |
| 複数社が入っているチャンネル | 「〇〇社様」という宛名が多い |
似たような線引きは、名刺の名乗り方を扱った記事で書いた「商流を見せたくない」という客先側の事情とも、根っこの部分でつながっているように思います。
社内Wikiにも、見える情報と見えない情報がありました
3つ目は、情報そのもののアクセス権限にまつわる話です。今の現場は、前フェーズの課題管理票が共有フォルダに残っていて、決定の理由をたどれる珍しい現場だと以前書きました。
開発に関する情報は、協力会社のアカウントでも比較的広く閲覧できる現場だったのです。その前提があったからこそ、別のページでアクセスを拒まれたときの落差が大きく感じられました。
参画から半年ほど経ったころ、出社した日に近くの席にいたプロパー社員が雑談の中で「来月、全社の方針説明会があるらしいですよ」と話していました。詳細を自分でも確認しようと、社内ポータルの検索で該当のページを探し、リンクをクリックしたところ、「このページへのアクセス権がありません」という表示が出ました。
開発情報はオープン、人事・総務系はクローズ
開発関連の情報にはこれまで大きな不自由を感じたことがなかっただけに、人事・総務系の情報だけがきっぱり切り分けられていることに、このとき初めて気づきました。前フェーズを担当していた別の協力会社が残した設計書や検討記録まで、権限を申請することなく閲覧できていたので、余計にその落差が際立ちました。
| 情報の種類 | 閲覧できたか | 例 |
|---|---|---|
| 開発関連 | 権限を申請せず閲覧できた | 前フェーズの設計書・検討記録・課題管理票 |
| 人事・総務系 | 「アクセス権がありません」 | 全社の方針説明会のページ |
自社の営業に確認してみると、「客先の内部向け情報にはアクセスできない前提で契約しています」という趣旨の説明がありました。契約書の文言そのものを見せてもらったわけではありません。
振り返ってみると、開発情報がオープンだったのは、それが今回の改修という契約の目的そのものに直結する情報だったからで、人事・総務系の情報は契約の目的の外側にある、という単純な線引きだったのだろうと今は理解しています。「見える範囲の広さ」は、親切さの表れというより、契約でお願いされている仕事の範囲そのものを映す鏡なのかもしれません。
ポイント: 「情報が見えるか見えないか」は現場によって一律ではなく、開発関連の実務情報はオープンでも、組織の内部向け情報だけは閉じられている、という混在の仕方をすることがあります。
一つの現場で経験した「見える範囲」を、別の現場でもそのまま当てはめない方がよさそうです。
現場によって、壁の厚さは違いました
ここまでは今の現場(4社目)の話ですが、他の現場と比べると、壁の感じ方はかなり違っていました。
2社目は三次請けで、指示の多くは客先本体ではなく間に立つ元請けの担当者から来ていました。客先のプロパーと直接顔を合わせる機会そのものが少なく、壁を感じる場面もあまり記憶にありません。
3社目は、前半約1年のデータ移行の時期が自社の人間が自分ひとりだけの配置でした。自社の同僚こそいませんでしたが、その分、客先のプロパーや別の協力会社の方との日常的な接点はむしろ多かったというのが実感です。後半の保守改善の時期には後輩が入ってきて、自社の人間は複数名になりました。
3つの現場を並べると、こうなります。
| 現場 | 自社の配置人数 | プロパーとの日常的な接点 | 壁を感じた場面 |
|---|---|---|---|
| 2社目(三次請け) | 複数名 | 少ない(元請け経由が中心) | ほとんど記憶にない |
| 3社目(二次請け) | 移行の時期は1名、保守の時期は後輩が入り複数名 | 多い(日常会話は活発) | 契約・評価など「奥の情報」には距離があった |
| 4社目(二次請け・今の現場) | 数名(私は自社の管理職として3〜5名を見る) | 中程度(会議・チケット中心。最近はほぼフル在宅) | 会議の招集範囲・呼び方・Wikiのアクセス権限 |
配置人数が多いほど壁を感じにくいわけでも、少ないほど感じにくいわけでもありません。同じ会社の同僚がいることと、客先の輪の中に入れているかは、別の軸の話だったというのが、3つの現場を経験しての見え方です。
なぜ壁ができるのか|契約の建前と秘密保持の視点
結論会社対会社で結ぶ準委任契約の建前と、参画時に署名する秘密保持の誓約が重なっているためだと、私は理解しています。契約書を直接見て確かめた話ではなく、経験した線引きからの推測です。
ここまで書いてきた3つの場面には、共通する背景があると考えています。
準委任契約の建前が「会社対会社」の関係を作る
SESの客先常駐は準委任契約が中心です。準委任契約は、民法643条・656条が定める、成果物ではなく業務の遂行そのものを委託する契約類型です。この建付けの下では、客先が個々のメンバーに直接指揮命令をしない建前になっています。
この建前を裏返すと、客先が仕事を委託している相手は、個人ではなく「会社」だということになります。日々の実務では個人に仕事が降りてきますが、契約上の当事者はあくまで会社同士です。
会議への招集も、呼び方も、情報のアクセス権限も、突き詰めれば「誰の会社の人間か」という区分に沿って線が引かれています。個人としての信頼関係とは別の軸で、この区分がずっと存在し続けているということです。
秘密保持の誓約書が、情報の線引きを後押しする
もう一つの背景が、秘密保持の誓約です。入場時の書類の詳細は、別の記事に書いています。
私の場合
今の現場に参画する際、元請け名義・客先名義それぞれ1枚、計2枚の誓約書に署名しました。条文の細かい文言までは記憶に残っていませんが、客先の非公開情報を必要な範囲を超えて取得したり、外部に共有したりしないという趣旨の条項があったという記憶はあります。
準委任契約の建前と、この秘密保持の誓約という2つが組み合わさると、「プロパー社員同士なら共有していい情報」と「協力会社にまで共有する必要はない情報」を、客先の側が無意識に選り分けやすくなるのだろう、というのが私なりの解釈です。
断定できないこと
これは私が契約書を直接見て確認した話ではなく、実務で経験した線引きから逆算した推測にとどまります。断定はできません。
呼ばれないのも、呼ばれるのも、それだけでは違法ではありません
ここまで読むと「会議に呼ばれない壁は偽装請負のサインでは」と感じる方がいるかもしれません。結論から言うと、そうは読めません。制度が問うのは会議に同席しているかどうかではなく、仕事の指示を誰が出しているかです。
この記事を書くにあたり、厚生労働省の「37号告示に関する疑義応答集」を実際に読みました。以前の記事では目次までしか確認できていませんでしたが、今回は第2集・第3集と、あわせて公開されているガイドの本文に当たっています。以下は私が読み取った要約で、条文や回答の転載ではありません。
第2集の問9・問10|同席やccは、それだけでは直ちに派遣にならない
第2集の問9は、請負労働者が管理責任者の判断で発注者側の会議や朝礼に同席するケースを扱っています。同席しただけで直ちに労働者派遣と判断されることはありません。ただし、その打ち合わせで作業の順序や割り振りなどの詳細な指示が行われたり、作業方針の変更が日常的に指示されたりする場合は、派遣と判断されます(出典: 第2集 問9(頁-5-))。
問10は、発注者からの依頼メールにccで入っている場合の話です。管理責任者の了解の下であれば、それのみで派遣とは判断されません。一方で、作業の順序や割り振りの詳細な指示が含まれる、方針変更が日常的に行われる、発注者が請負労働者に直接返信を求める、といった場合は派遣と判断されます(同PDF、頁-5-)。
問8には、請負労働者が1人しかいない場合、その労働者が管理責任者を兼任することはできない、という整理もあります。管理責任者が常駐していないだけで直ちに派遣になるわけではありませんが、連絡体制と労働時間の管理が担保されている必要がある、とされています。
第3集とガイド|アジャイルやチャットの場面でも、軸は同じです
第3集(出典: 疑義応答集(第3集)|厚生労働省)は、近年の開発手法を前提にした内容です。A1では、準委任でアジャイル開発をする場合でも、実態として指揮命令関係があれば契約の形式を問わず労働者派遣事業に該当する、とされています。
A3では、管理責任者がすべての会議に同席していなくても、それだけで偽装請負にはならない、と整理されています。ただし、仕事の割り付け、順序、緩急の調整といった指示が必要な場面では、受注者が管理責任者を選任して自ら指揮命令する必要があります。
A6は、会議・メール・チャット・プロジェクト管理ツールに双方の関係者が全員参加していても、それだけで偽装請負とは判断されない、という内容です。全機会に管理責任者の同席が求められるものではない、とも読めます。
あわせて、出典: 労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド|厚生労働省では、配置の決定や服務規律について、安全衛生や機密保持などの合理的な理由に基づく規律への関与なら、直ちに請負の要件に当たらなくなるわけではない、とされています。秘密保持を理由にした情報の線引きは、それ自体が問題というわけではなさそうです。
私の現場に当てはめると
ここまでの整理をまとめます。
| 状況 | 制度上の見方 |
|---|---|
| 部内定例に呼ばれない | それだけでは違法とも問題とも言えない |
| 全体会議に同席する・チャットに全員いる | それだけでは違法とも問題とも言えない |
| 会議やメールで、作業の順序・割り振りを客先が詳細に指示する | 指揮命令の実態があれば、契約形式を問わず派遣と判断される |
| 日常的に作業方針の変更を客先から直接指示される | 同上 |
つまり、呼ばれない側にいること自体を「偽装請負のサイン」と受け取るのは誤読です。私の現場は、部内定例に呼ばれない一方で、決定事項は結果としてチケットの更新で降りてくるだけで、会議やメールで作業の順序を客先から細かく指示される場面は、今のところ経験していません。ただ、決定の経緯を自社経由で聞く手段が整っているかというと、そこは心もとないのが正直なところです。ただしこれは私の現場の話で、他の現場で同じとは限りません。
指示の中身が直接こちらに来ていないか、自分の現場で気になる場面があるときは、偽装請負と指揮命令の境界線の記事の記事も参考にしてください。
なお、疑義応答集は一般的な整理で、個別の現場が適法かどうかを私が判定できるものではありません。判断が必要な場合は、一次資料と、労働局などの公的な相談窓口で確認してください。
制度上の窓口は、受注側の管理責任者と自社の営業です
請負・準委任の設計では、客先からの指示や調整は、受注側の管理責任者や自社の営業を通じて行われる前提です。そう考えると、会議に呼ばれないこと自体より、自分の現場でその窓口役が誰か、決定事項を自社経由で聞く手段があるかのほうが、実務では大事になります。
自分の現場で確かめておくこと
- 窓口役は誰か 自社の営業、現場リーダー、管理責任者のうち、客先との調整を担っているのは誰かを把握する
- 決定事項を自社経由で聞けるか 客先の部内で決まったことを、後から自社の窓口に確認できる道があるかを確かめる
- 一人配置なら連絡体制を確認する 常駐が自分だけの場合は、連絡の経路が自社側に確保されているかを見る。詳しくは一人配置の記事に書きました
案件の選び方や面談の段階での話は、事前面談と違法性の記事に書きました。
壁を前提にした情報の取り方・信頼関係の作り方
ここまで壁の場面と背景を書いてきましたが、壁があると分かった上で、実際にやってきたことも正直に書いておきます。
一度だけ、うまくいったと思える例があります。結合テストの日程調整のミーティングのあと、進行していたプロパーのリーダーに、個別にチャットで聞いてみたことがあります。
次期フェーズの優先順位、差し支えない範囲で教えてもらえますか
性能検証の結果待ちで、確定したら共有します。
会議の場では出なかった一言です。大きな情報ではありませんが、部内定例という壁の向こう側の空気が、少しだけ伝わってきた瞬間でした。
壁を前提にした情報の取り方・立ち回り方
- 会議の議事録・決定事項を、後から一言もらう習慣をつける 「部内で整理した結果です」だけで終わらせず、「差し支えない範囲で、判断の背景も教えていただけますか」ともう一段だけ踏み込んで聞くようにしています。断られることも多いですが、聞かないよりは情報が増えます
- 1対1の場を意識して作る 複数社が同席する会議では呼び方も情報の粒度も変わりやすいので、込み入った確認は個別にチャットや通話でお願いするようにしています
- 公開されている情報は取りこぼさない 開発関連の情報がオープンな現場なら、そこは最大限読み込みます。アクセスできない範囲を悔やむより、見える範囲を隅々まで使い切るほうが効率的です
- 自分からは名前で呼ぶ 相手からどう呼ばれるかは選べませんが、自分がプロパーの方や他の協力会社の方を名前で呼ぶことは、いつでもできます。小さなことですが、関係の作り方として意識しています
- 同じ立場の人同士で情報を突き合わせる 同じ自社の同僚や、別の協力会社の方と、それぞれが聞けた範囲の情報を持ち寄るだけで、一人で得られる情報より解像度が上がります
空振りだった例
この工夫のすべてがうまくいっているわけではありません。優先順位の変更について踏み込んで聞いたときは、それ以上の情報は結局引き出せませんでした。
同僚と情報を突き合わせたときも、収穫がゼロだったことがあります。部内定例の後に何を聞けたか確認し合ったところ、同僚に返ってきたのも同じ「部内で整理した結果です」の一文でした。新しい情報は増えませんでしたが、自分だけが特別に絞られているわけではないと分かったのは、それはそれで一つの収穫でした。
それでも、聞くこと自体をやめてしまうと、その一回で情報の経路がゼロになります。聞いて空振りに終わるのと、最初から聞かないのとでは、次に同じ場面が来たときの動きやすさが違うというのが、今のところの実感です。
もう一つ、壁があることを、プロパー社員個人への不満に変換しないよう意識しています。呼び方の違いも、会議の招集範囲も、目の前の担当者が個人的に線を引いているというより、契約の建前・秘密保持の仕組みの上に立って、その人なりの判断をしているだけだと捉えるようにしています。この見方に切り替えてから、壁そのものは変わらなくても、日々のやり取りで感じる摩擦はいくらか減りました。
まとめ
客先常駐でプロパーとの壁を感じるのは、気のせいでも、こちらの態度の問題でもないと考えています。要点は次の4つです。
- 壁を感じた場面 部内定例からの締め出し、呼び方の違い、社内Wikiのアクセス権限の3つ
- 背景 客先が個々のメンバーに直接指揮命令をしない準委任契約の建前と、参画時に署名する秘密保持の誓約。この2つで、プロパー同士と協力会社への情報共有の間に線が引かれやすくなっていると理解しています(契約書を見て確認した話ではなく、推測です)
- 制度上の位置づけ 疑義応答集では、会議への同席やメールのccは、それだけで派遣とは判断されません。問われるのは同席の有無ではなく、作業の順序や割り振りを誰が指示しているかです。呼ばれないことを違法のサインと決めつけない方がよいと考えています
- 現場ごとの違い 三次請けで客先と接点の薄かった2社目、移行期は一人配置でも日常的な接点はむしろ多かった3社目と比べても、今の現場での感じ方はまた別の質のものでした
自社で3〜5名を見る立場になった今でも、壁そのものをなくすことはできません。それでも、決定の背景をもう一段だけ聞いてみる、公開されている情報を取りこぼさない、名前で呼ぶところから自分で関係を作りにいく、といった小さな動きは、今すぐ始められます。
もし今、会議に呼ばれない、呼び方が違う、といった線引きにもやもやしているなら、それは客先の担当者個人の問題ではなく、契約の建て付けの上に立った振る舞いである可能性が高いです。呼ばれないこと自体は違法でも問題でもありません。ただし、作業の順序や割り振りを客先から直接細かく指示されているなら話は別なので、そこだけは見ておいてください。まずは構造を知った上で、聞ける範囲を一つずつ広げてみてください。




