国土交通省の調査では、情報通信業の雇用型テレワーカーは74.1%と、7割を超えています。私はその情報通信業のエンジニアですが、SESで4社の客先常駐を経験して、リモート率は現場ごとに0日から在宅中心まで、かなりばらつきました。
今回は、SESのリモートワークの日数が現場ごとに違う理由と、「フルリモート」と書かれた案件をどう読むか、参画前に何を聞けばいいのかをお伝えします。
この記事で分かること
- 4社の現場でリモートの日数がどう違ったか
- リモートの可否を最終的に決めているのは誰なのか
- 開発環境への接続方法が、リモートの上限を決めること
- 同じ会社の同じ現場でも、時期によって日数が変わった話
- 未経験・新人がリモート対象外になりやすい理由
- 面談で「リモートは可能ですか」と聞いても分からない理由と、代わりに聞くべき4つの質問
- 「フルリモート」表記の読み方と、リモート案件の探し方
目次
- SESのリモートの日数が現場ごとに違うのは、決める人が自社にいないからです
- 情報通信業のテレワーカーは74.1%でも、私の現場のリモート率は0日から在宅までばらつきました
- リモートの可否を決めているのは誰か
- 自社の制度は、現場には効きません
- 二次請け以下だと、規程がもう一段上から降りてきます
- 開発環境への接続方法が、リモートの上限を決めます
- 業種だけでは決まりません
- 日数は、時期や立場でも変わります
- 出社が前提だと、生活の設計まで縛られます
- 未経験・新人は、リモートの対象外になりやすいです
- 契約上の勤務場所と指揮命令も、在宅の可否に関わります
- 面談で「リモートは可能ですか」と聞いても分からない理由
- 参画前に確認しておく4つの質問
- 「フルリモート」の求人表記は、いつの時点の条件かを確かめます
- リモート案件の探し方は、実績のある現場を順に積むことです
- 出社が増える動きは、自分の現場の範囲で見ています
- 結局、選べないことは変わりません
- まとめ
SESのリモートの日数が現場ごとに違うのは、決める人が自社にいないからです
結論私の実感では、日数を決めているのは自社ではなく、常駐先の客先や、その上の元請けの規程です。だから、同じ会社に所属していても、現場が変わるたびに日数が変わります。
自社にリモート勤務の制度があっても、常駐している現場でその規程が使われるとは限りません。働く場所は、その現場を運営している客先で決まり、二次請け以下では元請けの規程がさらに上から降りてくることがあります。
だから、リモートで働きたいという希望を自社の営業に伝えても、話が進まないことがあります。営業の側でも決められない場合があるからです。ここを理解しないまま自社に掛け合い続けると、動かないものを押し続けることになりかねません。
情報通信業のテレワーカーは74.1%でも、私の現場のリモート率は0日から在宅までばらつきました
数字を確認しておきます。国土交通省の令和7年度テレワーク人口実態調査によると、業種別の雇用型テレワーカーの割合は「情報通信業」が最も高く、次点を大きく引き離しています。なお、これは直近1年にテレワークを実施した人の割合で、週に何日行っているかを示す数字ではありません。
業種別の雇用型テレワーカーの割合。出典: 令和7年度 テレワーク人口実態調査|国土交通省(PDF)
全業種平均が25.2%なので、情報通信業がいかに例外的な業種かが分かります。一方、私がこれまで常駐してきた現場はこうでした。
| 現場 | 立場 | リモートの扱い |
|---|---|---|
| 1社目 | — | 0日。研修直後で、リモートの対象外だった |
| 2社目 | 三次請け | 週1〜2日。VPNで自宅から接続。私物PCは客先に持ち込み不可、スマホは可 |
| 3社目 | 二次請け | 週1〜2日。VPNで自宅から接続。インターネットは一部制限、データの社外持ち出しは禁止 |
| 4社目(今の現場) | 二次請け | 最近はほぼフル在宅。もともとは週1出社の予定だった |
74.1%という数字と、この表を並べると、同じ情報通信業の中でも現場によって大きく違うことが分かります。1社目の0日から、4社目の在宅中心まで、日数は現場と時期で動きました。この差がどこから来るのかを、以下で分解していきます。
リモートの可否を決めているのは誰か
私が現場を移るたびに感じてきた範囲では、決定権は階層状に重なっていて、下に行くほど選択肢が減ります。
リモートの可否が降りてくる順
- 元請け規程を定め、客先を経由して降ろす
- 客先降りてきた規程を運用する立場のこともある
- 自社=私自社の制度は、常駐先には及ばないことがある
自社の制度は、現場には効きません
まず自社です。自社にリモートの制度があっても、常駐先で在宅できるかどうかは別の話になることがあります。自社の制度は自社の従業員としての働き方を定めたもので、常駐先でどう働くかは、客先や元請けの運用で決まるからです。
二次請け以下だと、規程がもう一段上から降りてきます
次に客先です。ただ、客先が自由に決めているとも限りません。二次請けの立場だと、元請けの規程が客先を経由して降りてくることがあります。
これは工期が現場の外側で決まる話と同じ構図です。
決定は上流で終わっていて、下流に届くのは結果だけ。誰にどう掛け合えばいいのかという経路そのものが、現場には見えていません。
ポイント: 「客先に交渉すればリモートできるのでは」と考える人もいるかもしれませんが、二次請け以下では、目の前の客先担当者も、上から降りてきた規程を運用しているだけの立場であることがあります。その場合、交渉は意味を持ちにくくなります。
交渉相手が交渉の当事者でない、という状況を先に見抜いておくと、無駄な期待をせずに済みます。
開発環境への接続方法が、リモートの上限を決めます
制度の話より前に、技術的にリモートができるかどうかが決まる部分があります。
2社目・3社目の接続方法
2社目も3社目も、自宅からはVPNで接続する形でした。3社目ではインターネットが一部制限され、データの社外持ち出しは禁止でした。
VPNで接続できる環境が用意されていたから、週1〜2日のリモートが成立していました。逆に、接続の仕組みがなければ、規程がどうであれ在宅では何もできません。接続の仕組みが、リモートの上限を決めているという形になります。
| 環境の置き場所・接続方法 | リモートの見込み |
|---|---|
| 客先のネットワーク内に閉じていて、社外からの接続手段がない | 在宅は基本的に不可能。交渉の余地がない |
| VPNやVDI(仮想デスクトップ)経由 | 接続元の制限次第。自宅から許可されているかがすべて |
| クラウド上にあり、支給端末から接続 | リモートの可能性がある。あとは運用ルールの問題 |
案件を見るときは、この3分類のどれに当たるかを先に確認すると、リモートの見通しが立てやすくなります。
業種だけでは決まりません
金融系と聞くと、在宅は難しそうに思えます。ただ、私の場合は、金融系のWebサイトの現場(3社目)でも、VPNで自宅から接続でき、週1〜2日のリモートができました。インターネットの一部制限やデータ持ち出しの禁止はありましたが、閉じた環境で在宅できない、という現場ではありませんでした。
日数は、時期や立場でも変わります
同じ会社に所属していても、現場だけでなく、時期や立場で日数が変わります。
1社目の0日は、研修直後でリモートの対象外だったためです。
4社目は、もともと週1出社の予定でした。ただ、基本的にフリーアドレスで、出社しても座席がない可能性があるため、出社は控えるようにしていて、最近はほぼフル在宅になっています。
理由は聞いていません(私の理解です)
4社目で出社が減ったのは、座席の都合が大きい、というのが私の理解です。客先の規程が変わったのかどうかは、確認していません。
規程の上では週1出社でも、運用や座席の都合で、実際の日数が変わることがあります。案件を検討するときは、制度の上の日数と、実際の日数を分けて考える価値があります。
出社が前提だと、生活の設計まで縛られます
働く場所の話は、通勤時間の話でもあります。そして客先常駐では、通勤先が自分の意思と関係なく数年おきに変わります。
2社目の通勤時間
客先までは片道45〜60分、往復で1時間半から2時間でした。リモートの日は、この時間がそのまま手元に残ります。
現場が変われば最寄り駅が変わり、通勤時間も変わります。それでも引っ越して調整するわけにはいきません。次の現場がどこになるか分からないからです。
私は現場で得られないものを業務外の学習で埋めようとしてきたので、この時間の有無は積み上がるものの量に直接効いてきます。
働く場所の条件は、単なる快適さの問題ではなく、そのまま学習時間の条件になっています。
未経験・新人は、リモートの対象外になりやすいです
1社目の0日は、会社の方針というより、新人という立場で決まっていました。入社直後の研修を終えて配属された時期で、リモートの対象外だったからです。
私の見方では、客先にとって配属直後の新人は、顔を合わせて質問を受け、テストの結果をその場で見て確認したい相手です。リモートを認めるかどうかは、その人を在宅で任せられるかという信頼とセットで判断されているように見えました。
だから「フルリモート 未経験」で探しても、条件に合う案件はなかなか出てきません。リモート率を上げたいなら、まず出社の現場で実績と信頼を積む順番になる、というのが私の実感です。
契約上の勤務場所と指揮命令も、在宅の可否に関わります
リモートの可否には、契約と指示の出し方も絡んできます。ここは私の理解の範囲で書きます。
1つ目は勤務場所です。客先常駐を前提にした契約では、作業場所が客先の事業所として扱われていることがあります。その場合、自宅で作業するには客先の承認が別途必要です。営業に「契約書や注文書に作業場所はどう書かれているか」を確認しておくと、在宅の見込みが立てやすくなります。
2つ目は指揮命令です。常駐していると、客先の担当者が席まで来て作業を依頼するという場面がありえます。在宅になると、その直接のやり取りが成り立ちにくくなります。客先がリモートに慎重になる背景の1つだと、私は見ています。
ただし、在宅での指示の出し方が法的にどう整理されるかは、現場ごとの契約形態によるので断定できません。契約形態の違い自体は、別の記事でまとめています。
面談で「リモートは可能ですか」と聞いても分からない理由
結論制度には解釈の幅があって答えが曖昧になりやすいのに対し、実績には幅がないからです。聞くなら制度ではなく実績です。
「リモートは可能ですか」と聞くと、「状況次第です」のような答えになりやすく、実際の日数までは分かりません。
ここから言えるのは、制度の有無を聞いても答えは曖昧にしかならないということです。制度は解釈の幅がある一方、実績には幅がありません。だから聞き方を変える必要があります。
参画前に確認しておく4つの質問
現場を自分で選べる立場ではないので、聞いたところで参画するかどうかを決められるわけではありません。それでも、入る前に実態を把握しておけば、入ってからの落差に振り回されずに済みます。
面談・営業に確認するリモートの4つの質問
- 今チームの何人が、週何日リモートしていますか制度ではなく実績を聞きます。数字で答えられなければ、運用されていないか、答える側が把握していないかのどちらかです
- 開発環境にはどう接続しますかVPNか、VDIか、クラウドか。社外からの接続手段がなければ、他の条件が良くてもリモートは実現しません
- リモートの可否はどなたが決めていますか客先の判断なのか、元請けの規程なのか。後者なら現場に交渉の余地はないと考えておきます
- 座席や出社の運用はどうなっていますかフリーアドレスで座席が足りないなど、規程とは別の事情で日数が変わることがあります
このうち1つ目が一番効きます。制度について聞くと解釈の話になりますが、実績を聞くと事実の確認になるので、相手も曖昧に答えにくくなります。今は全員出社です、とはっきり返ってくれば、それはそれで有益な情報です。
聞く相手は使い分けるとよいと考えています。1つ目と4つ目は現場の実態なので面談の場で聞き、3つ目のように契約や規程に関わる部分は、面談の前後に自社の営業へ確認します。面談で聞ける範囲と、営業のほうが詳しい範囲は違う、と考えておくと取りこぼしが減ります。
「フルリモート」の求人表記は、いつの時点の条件かを確かめます
「ses フルリモート」で探すと、求人には「フルリモート可」「リモート率80%」といった表記が並びます。ただ、表記は案件の募集時点の予定にすぎません。
私の4社目がちょうどその例です。もともとは週1出社の予定でしたが、座席の事情で今はほぼ在宅です。逆の動きもありうるので、フルリモートの文字だけで安心するのは危険だと考えています。
確認するなら、次の3点です。
- 「フルリモート」は今のメンバーの実績か、募集上の予定か
- 参画初日や立ち上げの時期に、出社が必要か
- 客先の都合で呼び出される頻度はどのくらいか
「フルリモートは嘘だった」という話を聞くことがありますが、私は悪意の有無より、表記が誰の判断で書かれ、いつ更新されるかを見るほうが現実的だと思います。営業が書いた文言と、現場の運用が食い違うことは十分ありえるからです。
リモート案件の探し方は、実績のある現場を順に積むことです
リモートの多い案件を狙うと言っても、私たちは自分で案件を選べる立場ではありません。できるのは、営業に希望を伝えることと、自分の経歴を整えることです。
営業には「リモートの実績がある現場を優先してほしい」と、次の更新や契約終了のタイミングより前に伝えておきます。リモートの経験がある人は、次の現場でも在宅で任せやすいと見られるからです。私も2社目・3社目で週1〜2日の実績を積んだあと、4社目で在宅中心になりました。
もう1つは、リモートの可否が決まる接続方法の確認です。先に紹介した3分類で、VPNやクラウド型の環境を使う現場は在宅の余地があります。希望を出すときも、「リモート希望」だけでなく、そうした環境の現場だと条件が通りやすくなります。
出社が増える動きは、自分の現場の範囲で見ています
出社に戻す動きが話題になることがありますが、業界全体の傾向は断定できないので、ここでは自分の現場で見えている範囲だけを書きます。
私の現場で言えば、4社目は今のところ在宅中心で、日数が変わるとしても客先や元請けの規程が先に動く、という見方をしています。規程の変更は上から降りてくるため、前触れなく変わりうるのが実情です。
だから、今の日数が続くと決めつけず、生活の設計には出社の可能性を残しておくのが無難だと考えています。
結局、選べないことは変わりません
正直に書いておくと、これらを確認したところで、私が案件を選べる立場にないことは変わりません。リモートが少ない現場だと分かっていても、提示されたのがその案件なら基本的には入ることになります。
それでも聞いておく意味はあると思っています。参画してから「思っていたのと違う」と分かる状態が、生活の設計に一番響くと考えているからです。週1あると思って通勤時間の前提を組んでいたのに実際は毎日だった、という状態は、単に出社が多いこと以上に負担になりそうです。
期待値を先に現実へ合わせておく。この記事で書きたかったのは、結局そこに尽きます。構造上どうにもならない部分がはっきりしていれば、どうにかなる部分に労力を回せます。
まとめ
SESのリモートの日数が現場ごとに違うのは、私の実感では、自社の制度の問題ではなく、決定権が自社の外にあることが大きいと考えています。要点は次の4つです。
- 決めているのは誰か 私の実感では、可否は客先や元請けの規程で決まっていました。自社にリモート制度があっても、常駐先で在宅できるかは別の話になります
- 接続方法と時期 開発環境への接続方法がリモートの上限を決め、同じ現場でも時期や座席の事情で日数が変わります。私の場合は、1社目0日(研修直後)、2社目・3社目は週1〜2日(VPN)、4社目は現在ほぼフル在宅でした
- 表記と立場 新人は対象外になりやすく、「フルリモート」の表記も募集時点の予定です。実績ベースで確かめます
- 統計とのずれ 情報通信業の雇用型テレワーカーは74.1%という数字が出ていますが、SESの客先常駐は現場ごとにばらつきます。統計と自分の実感が合わないことを、自分の会社の問題として受け取る必要はありません
参画前に何か一つだけ聞くとしたら、今チームの何人が週何日リモートしているか、です。制度ではなく実績を聞けば答えは具体的になりますし、開発環境への接続方法と合わせて確認しておけば、入ってからの落差はかなり減らせます。




